宅建士(その2)~時代の変化 サブリース不動産=かぼちゃの馬車事件

前回#仕事・スキルのブログで、「宅建士」のお話をしましたが、現在宅建士が新たな役割を担うようになって、賃貸不動産の「業務管理士」資格を取得すべく講習を受けることとなりました。2万円支払って、Web講習を受けています。
(正確には、近年新設された「賃貸不動産経営管理士」合格者が不動産管理業の実務経験2年を代替するための「実務講習」を宅建士として受講してから、更に宅建士独自に別にこの「指定講習」を受けています、となります。)

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この新しいニッチな役割・資格で、賃貸住宅に関わらない人には面倒な話で何だかわからないと思います。読み流していただければ結構ですが、それだけ住宅をめぐる環境が現在いい意味でも悪い意味でも変わってきたということだと思います。具体的には、
①不動産(土地・建物)が一般人の投資の対象となり、不動産を所有していない人でも不動産でお金儲けをするようになったこと、それによっていろいろな事件が起こったこと。
②住民の高齢化や住宅の老朽化で、空き家が増え続けていることや、老朽化したマンションで立替・大修繕が必要なのに積立金が足りない、管理費が高くなるなどどのマンション管理に将来不安があること。
一方で、③民泊など、住宅を活用した新しいビジネスが生まれていること。
主にこの3点が不動産という目で見た社会の大きな変化です。

それに対して、宅建士は本来不動産物件を右から左に売買・賃貸するだけの手数料商売の役割であったのですが、今や不動産の維持管理、入居者管理のための管理業者が不動産業には不可欠となり、新しいビジネスとして、今回その「賃貸不動産管理業」=要は"アパートの管理人"の仕事が重要性が増して、今回の講習に至ったというわけです。

 

講習は、「賃貸住宅管理総論」「管理業務の受託」「建物管理の実務」「建物・設備の知識」「金銭管理」「賃貸住宅管理業法」をビデオで学びました。最後にそれぞれの科目で10問の効果測定をして7問以上で合格して、晴れて「業務管理士」の資格が与えられます。教える先生は、弁護士と一級建築士の人でした。
受講した感想として、内容はマニアックですが、久々に不動産の勉強をする私としてはとても役に立つ講義でした。
特に、改正民法の部分で、敷金が明文化されたこと、原状回復費用負担が具体的に明示されたこと、住宅宿泊事業法の内容が斬新だったこと、不動産管理業者がオーナーのために不払いする入居者から取り立てをするとか法的手続きを取ると弁護士法にひっかるなど、勉強になりました。

時代の変化ということで、昨今広告で、「投資目的でマンションを買いませんか?当社で一括借り上げ、家賃収入30年保証します、副収入で老後資金を!!」など見かけます。一般人がマンション1棟を投資目的で購入し、そのマンションを不動産管理会社が一括借り上げして、そのマンションの入居者募集から、家賃収入の回収、マンションの清掃他維持管理もして、投資家の副収入のお手伝いを全面的にするという商売は当たり前になってきました。特に、すでに自宅を保有している人が、親から相続した実家土地の有効活用として、この「賃貸マンションのサブリース契約」をするというケースが多いと思います。

しかし、このサブリース契約=一括借り上げ家賃収入代行ビジネスで、数多くの投資家が破産に追い込まれる事件が2017年に新聞沙汰の事件がありました。「かぼちゃの馬車事件」もしくは「スルガショック」と言われる事件です。当時テレビニュースを見ていて、悪徳金融業者のように、スルガ銀行が女性向けシェアハウスのサブリース会社「スマートデイズ」と組んで顧客をだまし借金を抱え込ませたことに、金融のモラルダウンを感じた事件でした。
不動産会社である「スマートデイズ」は、2015年より女性向けシェアハウス「かぼちゃの馬車」シリーズ(以下写真)を建築し、一般投資家にオーナーを募り、その後オーナーからシェアハウスを一括借り上げして入居者を集め家賃を徴収し、オーナーに30年間家賃を還元するというサブリース賃貸業を成長させました。しかし、実情は数千万円から数億円でオーナーにシェアハウスを建てさせて、賃貸住宅管理業者として30年家賃保証を守れないまま借家法を悪用して契約を解除し、多くの投資家(一般人オーナー)は、建築費の借金と入居者の少ないアパートだけが残り、破産に追い込まれました。その裏で、そもそも数千万円から数億円も借りることのできない一般投資家の与信をスマートデイズとスルガ銀行が結託して改ざんし、多額の借金を投資家に押し付けてシェアハウスを買わしていたことも判明しました。その不正融資が1兆円に上っていたということで、銀行ぐるみの相当悪質な犯罪と思いました。しかし、お金の貸し借りは民事事件ということで逮捕者は出なかったようです。結局スルガ銀行は金融庁からの行政処分と被害者の借金を棒引きして債務を帳消しにして解決しました。

そのような事件があってから、賃貸不動産業者、特にサブリース業者の規制が厳しくなり、建物のオーナー希望者に金融業者を勧誘したり、誇大広告を出すことを禁じ、そして、今回のように宅建士が不動産管理業の役割を負うという新しい動きが出てきました。

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